無題
2012/07/28、フジロックにてTHE SPECIALSの本編終了後、Terry Hallは「Love, Love.」とつぶやくように声にしてステージを後にした。
世の中がかなしい。気の滅入るようなことばかりだ。誰が悪いのか、きっと誰もが、僕もあなたも、どこかでだれかがだれかとだれかを糾弾せずにいられない。
僕は怒る。怒りたくなることが、ある。誰だってきっとそうだろう。同じように、泣きたくなることもある。笑うこともあるだろう、それがきっとポジティブなもの、だけに止まらずとも。
僕は踊るのが好きだ。音楽を流しながら、軽く踊るのが好きだ。何かを忘れさせてくれる、ことはない。ただ、悲しみの中で踊るのが好きだ。
世の中がかなしい。けれど、生きなければならない、と思う。誰がここを読んでいるかはわからないが、生きていてほしいと、思う。
世の中はかなしいけれど、殺してはならない、とも思う。これを読む誰かが、誰かの何かが、殺してほしくはない。
Love,Love.
はてブロを誰が殺したか?
今週のお題「セールの戦利品」というわけではないのだが、円高のうちに海外の音源を買いあさっておこう、と思ってしまい、bandcampにこもる。しかし聴くだけなら、というか、ライブラリに入れるのであれば定額聴き放題Google Play Musicのラインナップに入っているということも結構あり、なかなか『ここでしか聴けない音源』にお金を出すのは難しい。というか、そもそも、この定額聴き放題天国の世の中でダウンロード音源にお金を出す、という行為について考えさせられる。今度はCDが骨董品として蘇ってくるのだろうな、と昨今のカセットテープ・ブームを眺めながら思う。
ドラマ『死幣 DEATH CASH』を観る。良くも悪くも、というか完全に悪い方だと思うのだが、三流の『ファイナル・ディスティネーション』といった感じで、J-ホラーかと身構えた自分がバカだった。しょうもない話ながら主演のじゅりなが体当たりの演技で頑張っているので観てほしい。
ドラマ『徳山大五郎を誰が殺したか?』を観る。まさかこう来るとは。手法としては『マジすか学園』に倣ったのだろうが、全く別の切り口からここまで鮮やかに『アイドルの(ための)ドラマ』をやられてしまっては脱帽するしかない。趣味は悪いがセンスは最高。という相変わらずの秋元節。
詠坂雄二『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』を読む。以前自分も似たような手法を試したことがあったのだが、まだ新人と言っていい時期にこれだけ書ける人間がいるのだから、自分はやめよう、もっと言うと小細工に頼るのはやめよう、と思わされた。無論それだけではなく、ミステリというジャンルのこれまでとこれからをつなぐ、最重要人物になるのではないだろうかと思わされるほどの大物感がある。
今日のアルバム。
V.A.『KING CRIMSON tribute The Letters』
イタリアのMellow RecordsによるKING CRIMSONのトリビュート・アルバム。2004年発表。基本的にこの欄では質の高い、紹介したくなるような良いアルバムについて書いているつもりだが、今回に関してはハッキリ言わせてもらおう。金の無駄だ。リンク先で無料フルストリーミング試聴できるが、そもそもディスク三枚に渡っているのでその時間すらも無駄と言えるだろう。ではなぜ取り上げるのかというと、この、煮ても焼いても食えない絶妙な駄目さが不思議と愛おしく、魅力的に感じてしまったからだ。King Crimson、という偉大なバンドを前に音が安い、リズム感がない、テクもないと三拍子揃った見事な駄カバーが三時間以上にわたり続くという拷問のようなアルバムなのだが、録音とテクを勢いで誤魔化す感じはローファイとガレージ(と、もうスカムもかもしれない)がブレンドされたような揺らぎがあり、これはひょっとしたらAnekdotenとも、本家の『メタル・クリムゾン』宣言とも違った形で90年代以降の新たなKing Crimsonを模索しようとしたのではないか。とまあ、このぐらいまで自分に暗示をかけたところで我に返るわけだが、間違ってもお薦めはしないと念を押しておくし、リンク先で13ユーロも出して買うならまだクリムゾンの持っていないCDを買うか、もしくは所持していたとしてもリマスターで買い換えるだとかの意図で消費した方が有意義と言える。しかし(これも繰り返しになるが)、僕は好きだ。
海波家のはてブロ神
今週のお題「わたしの本棚」とのことで書いてみる。棚に残してあるのは概ねエロ本だ。本能に直接訴えかけるタイプの(即物的な)創作、というものにずっと憧れがあって、それも蒐集のモチベーションとして機能しているのだと思う。それにしても、そろそろ整理せねばと思ってはいるのだが。
映画『ロング・グッドバイ』を観る。原作に対するいやがらせのような、しかし名画だった。なるほど、後に日本の『探偵物語』やPTA『インヒアレント・ヴァイス』へと繋がっていく要素は確かに感じられた。つくづく変な映画だったが、個人的にはかなり好きだ。
録画してあった『ベストヒットUSA 追悼:レクイエム・スペシャル』を観る。悲しい気持ちにひたりたい、と思って再生したのだが、誠実に作られており、特にモハメド・アリの発言を最後に流したのがグッときた。
indigo jam unit final live tour帯広公演を観る。ハマったのが最近と遅かったので、もう活動休止までには生で観られないかと思っていた。ピアノ/ウッドベース/ドラム/パーカッション・ドラムの4名が奏でるハイテンションなクラブ・ジャズ。飲食店でのライブだったため椅子ありなのが本当に勿体ない、というアガり方。シンプルながら広がりがあり、引き出しの無限さを感じさせてくれるだけに活動休止は本当に勿体ない。気になったきっかけであるDizzy Mizz Lizzy「silverflame」のカバーが聴きたかったな、と思う。
今日のCD。
U-full『A Girl on the Ship』
日本のSSWによるソロとしては初となるミニ・アルバム。2016年発表。故人の話題から入るのもどうかとおもうのだが、帯に吉良知彦の推薦文があり、彼が(数多のzabadakフォロワーから)見出したのがこのアーティスト、というのはとても慧眼だったのではないかと思う。日本のケルト風ポップス、というかやはりzabadakフォロワーとしての色が濃く、先達の影がちらつくこともまだある。しかし、この手の音楽性にしては珍しく現場でのたたき上げ感があり、オタクによるDTMとささやき声の箱庭遊びに留まっていないのが好印象だし、ついでに言うと、吉良知彦を引きつけたのはそういったバランス感覚なのではないだろうか、と勝手に思う。今作のみであれば(悪くはないものの)あくまでフォロワー、といった印象が抜けないのが難だが、これからに期待したい。
無題
zabadak吉良知彦氏、逝去。ただただ、悲しい。冥福を祈りながら、以下想い出を綴っていきたい。
はじめて名前を見たのは確か、田中としひさ『おこんないでね』だったと思う。TRPGのBGMにピッタリ、といったような紹介がされていて、そんな音楽があるのか、と中学上がりたてぐらいの自分は思ったものだった。それから縁あって地元のアマチュア劇団を手伝うことになり、演劇集団キャラメルボックスの芝居を出会う。『TRUTH』や『風を継ぐ者』を観て、その格好良さと演出の見事さに夢中になった。『創世記+2』や『Decade』、『STORIES』となぜかベスト盤ばかり集め始める。
入口がキャラメルボックスだったということもあり、僕にとってのzabadakは吉良知彦氏のソロだった。リアルタイムでリリースを追い始めたのは『COLORS』くらいからだろうか。『ブリザード・ミュージック』のサウンドトラックで「鏡の森」を初めて聴いた時の感動が強烈に残っている。風邪をひいて病院の待合室で、ポータブルCDプレイヤーを使って聴いた。
2005年、確か『ケルト meets zabadak』という企画名だったと思う。とにかく札幌に来る、というので観に行った。生で観た吉良知彦氏は、強烈だった。僕はいつも彼を『たましいが音楽の色をしているような』と形容するのだが、生で観た人間であればわかってもらえるのじゃないかと思う。それからはずっと、氏が北海道を気に入っていた/友人がいた、というのもあり、一年に一度から二度、何かしらのツアーで北海道に来る氏を観に行く、というのが恒例になっていた。
ギターと鈴と譜面台と私(弾き語り)、木村林太郎氏とのデュオ、『宇宙のラジヲ』リリースツアー、菅野朝子さんやあらひろこさんとの共演、ユカキラリタ……たくさんの編成で観たが、それらはすべて遠方から来るためのアコースティック編成で、一度もバンドセットを観ることは叶わなかった。いつかは、観られるだろうとたかをくくっていた。
2008年だったと思う。富良野野良窯というカフェ・スペースで弾き語りをしていたとき、先日はパリに行ってきまして、というようなMCに対し、特にzabadakのファンではなさそうな婦人が「たしかにシャンソンのような、良い声をしていらっしゃるものね」とつぶやいたのを、僕は覚えている。
マニアックな、オタク文化に強く影響を与えた、そういう音楽だったし、そういう部分も好きだった。けれど、もっと広く、長く、継がれていく、大きなスケールの『うた』だと、僕は、思う。
17歳の頃、学校にも行かなくなって久しかった頃、彼らの音楽を聴きながら初めて詩というものを書いた。いまはめっきり書かなくなってしまったが、当時一冊の詩集にまとめ、吉良さんに手渡した。「サインください」と言われ、焦った。彼はファンとの距離が近く、サインをもらったひとは多いだろうが、彼にサインをした人間は珍しいんじゃ無いかと思う。小さな自慢だ。きっと、彼にとっては冗談半分だったのだろうけど。
その中から、一編だけ抜き出してここに記す。若書きとかそういうレベルではなく恥ずかしいが、僕にとって初めての活字だ。地元の新聞に投稿し、載せてもらった。
「休まない翼」
ぼくは、きみのはね。
きみだけの、つばさ。
ぼくはきみになれないけれど、
きみがたびしたばしょ、
きみがあったひとたち、
きみのおもいでのすべてをおぼえてる。
ぼくはきみじゃないけれど、
きみのきらいなもの、
きみのきずついたばしょ、
きみのこころのすべてがきこえる。
ぼくは、
いつまでも、つばさ。
いつまでも、きみのはね。
ただ、感謝の念を伝えることができるほど、僕はまだ大人ではないみたいだ。早すぎる、と文句のひとつも言わずにいられない。遠すぎた10月にはついに辿り着けなかったな、なんてことを思いながら、この文章は終わっても、いつまでも彼への思いは僕の頭をぐるぐると回り続けるだろう。吉良知彦。偉大なアーティストの早すぎる死を、惜しむ。
はてブロの氷河期
告知。7/23(土)にさっぽろテレビ塔2Fにて行われる第一回文学フリマ札幌にサークル『SurvivalSicknessCity』として参加。スペースは『い-42』。百合小説の既刊の他に、昨年連載していた『世界の終わり頃』デラックス・エディション(書籍版)を持っていく。
『世界の終わり頃』
一時創作長編小説
A5判 本文78ページ 600円 イラスト 飛白( @kasuri01 )
自信作。書き下ろし、頒布終了の短篇再録ありの大盛りなので手に取ってみて欲しい。宜しくお願いします。
地元のライブハウスRESTにてROTH BART BARONとchikyunokikiのスプリット・ツアーを観る。6組が出演する長丁場のイベントだったが、最初から最後まで楽しめた。以下バンド別感想など。
- A Quiet Evening。American FootballやThe Get Up Kidsが大好きなんだろうな、ということが伝わってくるUSエモ・スタイルのロックバンド。素直な美メロを確かなテクで聴かせる、シンプルながらいいライブだった。地元にこんないいバンドが居たのか、と不明を恥じる。日本のインディに通じてディストロなどもやっているベーシスト氏と意気投合。音源を購入したが、2年前のものだったので次作が待たれる。
- REAL SHOCKS MATTER。以前までの地元のイメージというか、Ken YokoyamaのO.A.なども務めたというのが納得の強面メロコア。あまりノれず。
- BENBE。エレクトリックギター、ウッドベース、ヴァイオリン、アコースティックギター/ヴォーカルによる酔いどれフォーク。長丁場だったので、ゆるめの音に癒された。MCで高田渡氏をリスペクトしている旨が出たが、確かにそういった感のある音。YouTubeにPVが上がっている この曲が良かった。
- ROTH BART BARON。今回の目的だったのだが、これがもう、とんでもなかった。今回はサポートにシンセを加えたトリオ編成。『化け物山と合唱団』発表時の大編成アコースティックが一番印象的だったし、そういう人間は多いのではないかと思うのだが、小編成でもまったく問題は無かった。むしろバンドとしてのポテンシャルを知ることができていっそう好きになったと言っていい。楽器というよりSE担当とでも表現したくなるようなシンセ類の使い方(まさにサポートだと感じた)、パーカッション的な広がりを持って土台を広げていくドラム、そして何よりも喉。本当に、ヴォーカリストとして神に選ばれた類いの人間だ、と思う。エフェクタ類をつないだアコギを自在にかき鳴らしつつ響く歌声は本当に、本当に、圧倒的としか言えない。「小さな巨人」、「氷河期(#1~3)」、「電気の花嫁」、「春と灰」、「SWIMMING POOL」といった辺りをやっていたと思うが、いまひとつ記憶が定かではない。ライブでの姿を観ることによって音源の試行錯誤も分解できるような気がしたし、ファンだとか気になっている、という方には是非とも一度ライブを観てみるのを薦めておく。
- toilet。ふざけた名前で敬遠していたのだが、意外に楽しめた。前述のAQEベーシスト氏と仲の良いギタリストが面白い音を出していて、オーソドックスなオールドパンクにひとひねり加えたような、形容しがたい奇妙な音楽性。ヴォーカルの不思議な動きがインパクト大。
- chikyunokiki。入場してからこのバンドはヤバい、と色んな人間から何度も聞かされたのだが、確かに凄かった。テクニカルな歌ものポストロック、と片付けてしまえばそれまでだが、地を這うファンクネスと確かなエモ心、変幻自在のバンド・アンサンブルはイベントの〆として確かな満足感を与えてくれた。アンコールではチューニング時にRBBの「アルミニウム」を弾き語りで披露するというレアな一幕も。
例によって例のごとく、短くまとめるのは無理だった。しかし総じて満足度の高いイベントだったので、気になったバンドはぜひともチェックしてみて欲しい。
映画『カイト/KITE』を観る。驚くほどにつまらない映画だった。フォローに困る。しかしこういう映画をダラダラと観ている時こそ生の実感を得られるような気もする。そこまで大げさな話でも無い気がする。
ライブレポを長めに書いたためCD評は休み。
ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキング・はてブロ
篠山紀信展を観る。そのもの、の力(『写真力』というタイトルだった)に圧倒され、解説を参照していく。時代の美しさ、を切り取る芸術。いつもそうだが、美術館に来ると精神の活力のようなものが得られる、気がする。
ボリス・ヴィアン『日々の泡』を読み、訳文の読み比べのため『うたかたの日々』にも着手。後者は古典新訳文庫版の、野崎歓による訳の方。ハヤカワのものは装丁、訳文ともに今ひとつ惹かれなかった。やはり最新の訳が読みやすいか、と思いつつも『日々の泡』も捨てがたい。
ニコ生にて映画『シャークネード』をうっかり観てしまう。本当に、『うっかり』『観てしまう』という形容が似合う、しかし(悔しいことに)面白い映画だった。
人生で初めて左利き用ハサミというものを使ってみる。ハサミとはこんなにも使いやすく、切れるものなのかというカルチャーショックを受けた。なぜ僕は今までわざわざ不便な思いをして右利き用のハサミを使っていたのだろうか。
本日のCD。
- アーティスト: ドン・フリードマン,チャック・イスラエル,ピート・ラ・ロッカ
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
- 発売日: 2014/12/03
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Don Friedman Trio『Circle Waltz』
アメリカのピアニストによる62年のアルバム。ピアノ/ベース/ドラムによる(一般的な)『ピアノ・トリオ編成によるジャズ』そのものだ。リリカルでやわらかなタッチのピアノ、奔放になりすぎずにウォームなベース、そっと静かに寄り添うドラム。こういった『美しさの高みにあるもの』を言葉にするのは難しい。しかし、アルバムを再生して表題曲のイントロが聞こえてきたときの感動は忘れられない。世の中にこんなに美しい音があっていいものか、とまで思った。ただただきれいなもの、を欲しているのならお薦めだし、満足できるのではないかと思う。歴史的名盤とのことだが、さもありなん。