虚空の黙祷者

クローカ/黒岡衛星の日記帳

はてブロに虹が降りた

Spiral Lifeを好きになった。2000年頃、録画していた演劇集団キャラメルボックス『ALONE AGAIN』のラストに流れた『20th Century Flight』を聴い(観)て、少し経ってからのことだった。WitzというレーベルにはレーベルメイトとしてL⇔Rがいた、ということを知る。最初は、侮っていた。いかにも90年代の一発屋的なポップスだろう、と。とんでもなかった。一番売れたであろう『Let me Roll it!』には厭世観や怒りが詰まっていたし、初期のマニアックなポップの中にも確実に息づくロックの魂。いっぺんにファンになってしまった。黒沢健一、シンガーソングライターという人種の最高峰と言っていい、天才の早すぎる死を悼む。

稿。無事、太宰治賞へと送ることができた。達成感とともに自分へのご褒美という名の買い物が止まらない。駿河屋で中古CDを、ちょうど半額フェアの始まったDLsiteでインディのエロゲや淫語音声を買い込む。SKE48のビデオクリップ集も予約(時期的に自分へのクリスマス・プレゼントだろうか)。

Kindle Unlimitedで目に付いた江波光則『ボーパルバニー』を読む。スマートフォン電子書籍、とはどういった感じなのかと体験したかっただけなのだが、あまりに面白く一気に通読してしまった。あまりにアモラルで痛快な、最低で最高のオタク・ノワール。タイトルでわかるとおりの『ウィザードリィ』トリビュート・ノヴェルなのだが、こういった解釈があるか、と膝を打つ。元々は虚淵玄の知り合いで業界入りしたと聞いて納得。続編はきちんと買って読みたい。

日のCDその1。

Let me Roll it!

Let me Roll it!

 

L⇔R『Let me Roll it!』

日本のバンドによる8枚目のアルバム。1995年発表。世間では『セルアウトしてしまった一枚』としての評価が多く、特にファンには『そこまでの名盤ではない』と言われすぎな気がするが、そんなことはない。ヒット・シングルという枠を超え『時代を代表する』いくつかの楽曲を軸に展開される一大ポップ・サーカス。しかしその裏側には既に時代のポップとしての孤独/厭世観といったものが剥き出しになっており、ただのネアカ・ポップスにもとどまらない。苛立ちを隠さない中盤の「僕は電話をかけない」~「TALK SHOW」への流れ、そしてアルバムのラストを飾る「LIME LIGHT」はあまりに悲しい。ポップの頂点で描いた風景はあまりに哀しく、それでも美しい。どうか、永く聴かれ続ける名盤として残っていって欲しい。

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日のCDその2。

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Salle Gaveau『Strange Device』

日本のバンドによる2ndアルバム。2008年発表。なんとなく、ライブで聴いた曲も無いし、と後回しにしていた本作だが、やはりというか当然というか最高だった。『プログレッシヴ・ロック meets タンゴ』として試行錯誤感が強くもポップだった1st『Alloy』、或いは『ピアソラの観た夢の向こう側』を正しく体現する3rd『ラ・クンパルシータ』と比べると本作はカオスだ。ロックともタンゴとも言い切ることができず、無理矢理にジャンルを当てはめようとするならば『アヴァンギャルド・チェンバー・ミュージック』だとかそういった曖昧さになってしまう。鬼怒無月が微妙に関わりのあるR.I.O./レコメンと呼ばれるジャンルが最も近いかもしれない。複雑なコンポーズを内包して尚、プログレ/タンゴ由来のロマンチシズムを失っていないのは三枚ともに共通するところだ。最初の一枚、ということでは1stか3rdのどちらかを推すが、結局は揃えることになるのだろうからどこから入っても良い、とは思う。現代日本の至宝であり、新譜の予定がなく、ライブもあまり行われていない様子を見ると非常に残念だ。せめて広く聴かれることを望む。

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日のCDその3。

音

 

zabadak『音』

日本のアーティストによるソロユニットとなってから最初のアルバム。1994年発表。12/6は吉良知彦氏の誕生日ということで、少し遅いけれども触れておこうと思う。一曲目からパブリック・イメージとは違った(しかし定期的に顔を出すことになる)ニューウェーブ経由のギターロックが飛び出してきて面食らうが、後に定番となるスケールの大きなラブソング「星の約束」、『星の王子様』をモチーフにしたというミステリアスな「点灯夫」(僕がzabadakで最も愛する楽曲のひとつでもある)、Cara Jonesをフィーチュアした「fatal flaw」、吉良氏の洋楽(80's/ニューウェーブ)趣味が色濃く現れた「planet earth, I sing」と、前半部だけでも聴きどころが多い。比べると後半部はやや地味にも思えるが、むしろこちらがzabadak的に本領なのではという気がする良心的なうたばかりだ。と、どれだけ書こうともこの盤に関しては目玉である「14の音」について触れないわけにはいかないだろう。当時の周辺人脈を動員して歌われる、『音』を『歌う』ことについての根源的な問い。後に定番とする初期Mike Oldfield的大曲ながら、あくまでメドレーの伴奏に徹するトラック、個性的な歌手たちとユニークな一曲だ。『のれんわけ』後最初の一枚ということで吉良知彦というパーソナルが強く出た、zabadakのコアと言っても良いだろう作品(『かたみわけ』でも当時の録音物から参加特典が配られたという)。最初の一枚にとは言わないが(上と同じことを言ってしまった)、いつか聴いて、揃えてもらいたいと願う。

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