虚空の黙祷者

クローカ/黒岡衛星の日記帳

不明のはてブロ

週のお題「雨の日の過ごし方」ということで書いてみる。やはり外出する気が失せるため、素直に部屋で小説など読みながら音楽を聴いているのだが、かといって晴れの日にはきちんと外出しているかというとそういうわけでもなく。あまり引きこもっていてもいいことがないので出かける習慣をつけたいものではあるが。

の続き。6/3にHipsterで行われた弾き語り系のライブに行ってきた。chikyunokiki山田祐伸による企画ということで楽しみにしていたのだが、裏切られない、すばらしい面子によるすばらしいライブだった。以下簡単にレポートを。

一番手は企画主の山田祐伸。「select selection」〜「Life Game」というchikyunokikiの2ndに収録されている楽曲から始まったのだが、開演前の空気をがらっと変える演奏。コンパクトなシンセとアコースティック・ギターをエフェクタで操作する、乱暴かつシンプルに表現すると『札幌ハードコアを注入されたキセル』といった感じ。単純にジャズの人だから巧い、だとかそういったしょうもない話ではなく、自らのテクニックとエモーショナルをたった1人でどう見せるか、ということに対して求道的な印象を受けた。同じくchikyunokikiから1stの隠れ名曲「海のような草原に魚は泳ぐか」 、大名曲「ひきかえる」で終了。1st収録曲はなんだか泣けてしまう。ソロでの音源にも期待がかかる。

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二番手のシラサキトオル糠平(ぬかびら、地名)のアーティストということで、どういう音楽が飛び出してくるか気になっていたのだが、いい意味でらしいというか、大自然のスケールの大きさを若者の視点で切り取っていく楽曲が痛快だった。ちょっとzabadak吉良知彦の弾き語りであったり、90年代のMTVアンプラグドといったものを思い出しつつも、やはり北海道『らしさ』のようなものが現れてくるのが面白い。

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三番手はsenoo ricky。斎藤和義の『12月』が目の前で再現されているような、と言って伝わるだろうか、シンプルな名曲をシンプルに届ける、最もスタンダードながら難しいスタイル。from京都、と言われると何となく成る程と頷いてしまうような歌詞世界が独特。「暇珈琲」、「猥談」といった楽曲に感銘を受ける。徳永英明「夢を信じて」カヴァではその場でRyo Hamamotoを迎えてのスペシャル・セッションに発展したりもして楽しかった。

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ラストのRyo Hamamoto。いかにも東京のバンドマンといった風だな、と思っていたらぶっ飛ばされた。その変人ぶりと世界観を表現するのは難しいが、南国焼けした成山剛(sleepy.ab)か、楽曲がバグったまま進行する福山雅治か。エレキ弾き語り、というスタイルもややユニークながら、『変でいい曲』を淡々と演奏するスタイルにとにかく圧倒される。「カリブに配属」や「中古のベンツ」といったユーモラスな曲名からは想像もつかない名曲が目の前で展開していく上、目が笑っていないのでちょっと怖いぐらいだった。

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いい感じに盛り上がり、客側もアンコールを引っ張りに引っ張って終演。MCの「時間が許す限り居座っていただければ」という下りを真に受けて演者と話しながら粘ってしまい、帰ったら23時を回っていた。とにかくいいライブだったのだが、単純に知名度の足りなさから集客に繋がっていなかったのが勿体無い。次回、そのままという風にはいかないだろうが、こういった面子が揃ったらもっともっと大入りでいいと思うし、実際にそれだけの価値がある興行だった、と思う。地元のシーンがもっと盛り上がってくれることを祈るばかりだ。

日のCD。

ソングライン

ソングライン

 

羅針盤『ソングライン』

日本のバンドによる3rdアルバム。2000年発表。senoo rickyはドラマーとして山本精一のサポートもしているということで、、終演後にちらっと話題になった名盤を。『はちみつぱいみたいなうたもの』としてスタートしたバンドだが、この辺りになるとサッドコアやスロウコアに近い。山本精一ならでは、といったシューゲイズしつつも抑制されたギターに淡々とした歌唱で綴られる諦念と、ピアノを含むリズム隊による『気の利いた』という言葉がとにかく似合う演奏はあらためて今聴いてもスタンダードであり、あまり言うことが見当たらない。羅針盤は名盤しかないバンドだが、第一期のラスト作として位置付けようとしていたこともあり、やりきった、それでいてバランスの良さでもまずは今作を聴いてみて欲しい。「ひとりのくに」が泣ける。

 

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羅針盤「ソングライン」

日のCDその2。 

Into a new world

Into a new world

 

DIMENSION『Into a new world』

日本のバンドによる15枚目のアルバム。2001年発表。これは今聴くべき隠れた名盤なのではないか、と思う。フュージョン・ブームも一段落した2001年、リズム隊の不在をデトロイト・テクノ的な浮遊感で解決することにより、クラブ・ジャズ的に今聴いてもまったくダサくないどころか、Robert Glasper以後のスペーシーなフュージョン・リヴァイヴァルが持て囃される風潮にも合致。Light-Mellow的な再評価の隣人としても聴けるし、意外と風化せず徒花にならないであろうユニークな一枚だ。

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