虚空の黙祷者

クローカ/黒岡衛星の日記帳

はてブロ船長回顧録

BSフジで放送していた鈴木慶一のミュージシャン生活45周年記念ライブを観る。はちみつぱいを始めとして様々なバンド/ユニット/ゲストが出てきたわけだが、一番良かったのは最新作の編成であるマージナル・タウン・クライヤーズだった。殆ど化け物と言って良いミュージシャンだなと改めて再確認。無論THE BEATNIKSやムーンライダーズ(休養していた武川氏を呼び込んでからの「スカーレットの誓い」には泣かされた)など、キャリア通しての才能のぶれなさに関しては言うまでも無いだろう。アンコール、出演者全員登場だから当たり前なのだが、「EIGHT MELODIES」をPANTAが歌っているのは不思議な感じだ。

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人音楽に於いて『民族音楽』がジャンルになっている、という話。twitterで見かけて面白いトピックだと思ったので僕も少し書いておこう。

この方もその後のtweetで発言しているように、音楽のジャンルとしてルーツを辿っていくと『ケルト』が最も近いのだが、ゲーム音楽やそのフォロワーといった創作がその民族性を『架空の民族』に移し替えていったのは、たとえばエミール・クストリッツァとゴラン・ブレゴヴィッチが喪われた祖国を伝承するためにトラッドを用いたのとは真逆と言っていい。それもアヴァン・トラッドのように『その先』を描こうと意識するのではなく、結果的に『オルタナティブ』なものとして存在している、というのは確かに面白いかもしれない、ということを思う。

このサークルは確かきちんとケルト音楽を学んだ人がやっている筈なので今回の話とはずれてしまうのだが、個人的に好きなので貼っておく。

日のCD。

ストライク・リビルド【アッパー】

ストライク・リビルド【アッパー】

 

THE JETZEJOHNSON『ストライク・リビルド【アッパー】』

日本のバンドによる過去曲のリメイク・アルバム。2016年発表。最初に断っておくと、今作に関して、僕は一切冷静な判断が出来ない。そもそもが、このバンドと出会い虜になったきっかけが今作に収録されている(「DIVA」だ)し、帯のコピィが2ndアルバムに書かれていた『電子音楽のその先に 轟音ロックのその先に』だとか、装丁が『デプス・オブ・レイヤーズ』の続きとしてデザインされているだとか、インディ時代からファンを続けている人間にとって特別なものだからだ。しかしだからといってファン・アイテムというわけでは全然無く、むしろ今が最高であるTHE JETZEJOHNSONにとって、代表曲のリビルド、というのが悪くなるわけがない。今なお切れ味の鋭さを失わない歌詞と、今よりもシンプルに響くエモーショナル。新編成によって、当時の小さな不満が一つ残らず潰されており、ただでさえ良い楽曲群の痒いところにすべて手が届く仕様になっている。すべてを、とはとても言えないが、そこそこ長くを見てきた人間にとって特別なアルバムなのは間違いないが、そうでなくとも優れたポップ・アルバムとして多くの人間に届いて欲しい。そして「DIVA」を聴いて泣いた僕の感動がいくらかでも伝わって欲しいと願うばかりだ。


ジェッジジョンソンMV「太陽の帝国」